研修医の声
地域医療に触れる
入院から診てきた患者さんが元気になって退院され嬉しく思っています、1年目の佐藤です。
患者さんがご家族を引き連れ笑顔でナースステーションの前に立ち止まり、感謝のお言葉と「もうここにこなくていいよう頑張ります」と満面の笑みを浮かべながら「元」患者さんへとなる姿をお見送りするというのは、どうもこみあげてくるものがありますね。
初めての患者さんというのもあり気合いを入れており、土日も毎日会いに行ってカルテを書き、時間がある時は退屈しないように雑談しにいったりと、多くの時間を一緒に過ごしました。
「まだあの先生患者さんと話ししている。早く終わらないかな」
と、用事があるコメディカルの方に思われたのではないかと不安でしかありませんが。。。
しかし、その甲斐あって入退院までの一連の流れ、栄養指導を一緒に受けたり、ついでに患者さんから得た質問をそのままリハビリの方へ質問をしたり、配布資料にコメントやわかりやすい解説を付けて見たりなど様々しながら、多くのことを学べました。
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先の方は
「歩いて入院、歩いて退院」
でしたから、万々歳。ただ嬉しいものです。
しかし、残念ながら全てが「嬉しい退院」というわけではありません。
高齢化率トップ10に名を連ねる山形県の中でも、上位の高齢化を誇るここ鶴岡市においては、80超えのじいちゃんばあちゃんの入院が後を絶たず、
「歩けず入院、寝たきり退院」
といった悲しい顛末を辿る場合も少なくありません。
国家試験的に重要であった「日本人の死因第三位の肺炎」というフレーズは、こと地域医療においてはより複雑な意味を持ちます。実際に臨床に出て退院まで見ていかねば知ることが出来ない、社会的事情が含まれるのです。
入院前日まで元気に畑作業をできていた方が、突如心不全から寝たきりへ。その間たったの1か月ですよ?
授業ではサラッと言われるような、高齢者の連鎖的なADLの低下も、毎日顔を出していればサラッといえるものではありません。徐々に悪化する様を指を咥えて待つしか無い無力感、入院に伴うせん妄や認知症の進行は見ている側としては辛いものです。
再び畑ができるように治るハズが、よりADLが落ちた状態で施設に入所という結末に。
その直接的な打撃の1つとして上げられるのが肺炎です。肺炎を見て原因菌を同定し、特定の抗菌薬を使うだけでは病気は完結しても患者さん自身は完結しません。病気が治ってから「どこに行くのか探す」旅路が始まるのです。
こうした高齢者に対する医療の実態は地方の中核病院でなければ、肌で感じることは難しいでしょう。苦い思いをしながらも、こうした環境下で実に学ぶと言うのは不適切かもしれませんが、有意義な研修が出来ているように思えます。
大学の実習では難しい疾患ばかりで、現実を見ることが出来なかったものです。
また、昨今問題となる独居老人の問題。こうした方々が退院後一人での生活が困難であれば、施設入所を選ばざるを得ないのが現状です。別に施設入所が誰にとっても良くないものとは限りませんが、認知機能がはっきりしている方であれば、こうした現状を目の当たりにし様々思考をめぐらすもの。そうした方々に施設入所を提案する側であるならば、彼らの思いをしっかりと知る必要があるでしょう。
荘内病院にいるうちに、施設入所を選ぶ方々の心境をよく知り気持ちを汲んでの提案ができるようになりたいものです。
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話しは変わって、先日私が最も尊敬する大学の部活の先輩と卓球をした後、3時間ほどスタバでお茶をしてきました。
庄内の地域医療の実際から始まり、医療資源の問題、若い世代の医師が今すべきこととは、と普段ふざけたブログを書いている私にしては「何しったかぶったことを?」と思われる内容を議論してきました。
3年地域医療に従事してきた先輩が感じた「若い医師の感覚」は上の世代の先生方が感じる地域医療のイメージとは異なるもので、お話していても新鮮で面白いものでした。ただ何を話したかと言われると、過激な内容も多く載せられませんが...。
ただ1つ、結論として今後加速化する高齢化や医療費の問題に対応していく為には、従来のような「医師が医師としてだけ成長していく」だけでは足りないのではないかということです。どうも私達が盲目的にさせられているような流れがあるように思います。そうした医師から淘汰されていくのではないか、と研修1年目の私が妄想するところです。
では淘汰されない医師になる為に何をすべきか、と言えばこれからじっくり考えていかなければなりません。危機意識をもって考え続け、来る時に備えた感性を持っておくことしかないでしょう。その意味では「高齢化率で日本の未来を行く鶴岡」は考えるのに最適な場所の1つとも言えます。
ということで、ただ地元に帰って研修する位にしか考えて無かった私に突き付けられた鶴岡の医療の現実。患者さんが一周したことで様々なことを学ぶことができました。
「鶴岡の医療に携わる意義」を考えさせられたこの一週間でした。
2018年04月28日