研修医の声
カイザーで始まり、カイザーで終わる(産婦研修)
産科の申し子と言わんがばかりに、始まった産婦研修。
2週間前の月曜、9時からいきなり緊急カイザーで始まり、最終日金曜の今日、これまた緊急カイザーで終わる。
一周して「緊急カイザーじゃないカイザーって何だろう」と思える程に様々な経過の緊急カイザーを見せつけられ、今日なんかは新生児チームも絡む荘内病院の周産期センターの底力をまざまざと見せつけられ、プロとプロの技の協演の余韻に浸りながら、カウンターで一人飲みをしてる気分でPCの前でお風呂上りのコーヒー牛乳を飲みながら記事を書いているなう。
というのも、臨床経験豊富な40後半overの普段は気さくなおっさんたちが、超超低出生体重児相手にのしのぎを削ったわけです。
「これから技を見せよう、幸帽児帝王切開だ。知ってるか?」
内心「知りません!!!!!」と、「何それ?」状態で鈎引きしていたのだが、見る見るうちに子宮から卵膜に包まれた球体が取り出される。
卵膜から透けて見えるふよふよと浮遊する児は、まだ母体から出されたことに気付けていないようだ。
「よし」と一瞬息をつき、「破膜して出すぞ」とすぐさまあわただしくなる。
メスで小さく切れ込みを入れて流れるような手つきで児を取り出す。
エコーで分かっていたことだが小さい。600gに満たないのも納得だった。
予定日があっているなら肺は完成しているはずの週数...だがサーファクタントもろくに出せない超が二つ就くほどの未熟児だ。
それでも母体から娩出され、胎児から、新生児へと呼び名が変わる。それを知ってか児も役割をこなそうと必死になるのだ。
顔をくしゃっとしかめて、小さい手足もわさわさ動かして、おぎゃと微弱に声を出そうとする。
小さくとも声を聴けば安心する。よくぞ生まれてきてくれたなぁ。でもどうやって生かすんだろう...
そんなことを考えている時間は無い。産婦人科医の領分は出すまで。
すぐに児を小児科医に手渡し、迅速に挿管へ移行し厳密に管理を始めるのを尻目に、母体の閉創に着手する。
正直、何度も見てきたカイザーの閉創よりかは、NCPRをやった手前手を下ろしてそっちを見たかったが...なんなら先生もちらちらよそ見をしていたが...今は産科ローテート。
泣き声が聞こえるうちに、NICUへと撤退した様子だけ確認できればもう満足
やはり小児科の先生は凄い、小学生並みの感想ですが。何事も無く元気に育ってくれれば...と切に願う。
ということで、最後にこれぞ周産期センターを持つ荘内病院の本気だと言わんがばかりの症例を経験することができ、もう初めの四か月目にして大満足な研修を送れたと思い始めてしまっています、、、
産科では3週間のうちに、カイザー8件、鉗子分娩1件、吸引分娩1件、普通のお産はいっぱい、見ることが出来てもう何を見ていないかは病みえ先生を見てもわかりません。
先生方三人ともお忙しくしてはいますが、それもそのはず現行の医師数には有り余るほどの患者数で、今日のように外来予約の患者さんを待たせての緊急対応をせねばならない時も。
待っている患者さん達には申し訳ないけれども、優先度を考え危ない妊婦さん、胎児を優先して対処していくと言うのは、地域にとってはこれ以上なく頼もしいものですよね。
また、婦人科も色々見させて頂きました。
「そういえば先生、○○見たことが無いです」
と言えば大概翌々日位には見れてしまうほどタイミングと症例に恵まれてしまったわけですが、唯一見たくなかったデルモイドにも...
グロすぎて、こればっかりは見てられなくて婦人科医にはなれないなぁとさえ思う初見殺しの内容物...色んな意味で充実してました。
さて、最近では大学病院志向が強く、医師が少なく教えて貰えないんじゃないか、、、と思い地方の病院を避ける傾向がある一方で、ここ荘内病院では相も変わらずいっぱい教えてくれる先生ぞろい。ここ産婦人科も例に漏れずです。
こんなに症例数が集まってきて、これでもかっていう貴重な経験が出来るのは、上級医も少ない割に病院のハコが大きくかつ研修医が少なく全て独り占めできるからに他なりません。
地域医療と言えば、山の中なり、小さな島なりで内科一般をしながら往診をする「マンガでありそうな医療」のイメージが強いかと思います。
ここ荘内病院のように地域の中核病院であるが故に症例数が集まり、それに見合わぬ少ない医師数で、クリティカルな患者までしっかり対応する「地域に必要な治療を地域に根差して行う」医療というのも、地域医療の一つの形でしょう。
鶴岡市に必要とされていることを理解し、それに応えようと医療に没頭する先生方を見ていると、ここ鶴岡市の地域医療も明るいように思います。サラリーが仕事に見合っていない医師の方が多いように思います。サラリー以上にこないしている仕事や責任が多いです。
こうした使命感を持って働いている熱い先生方の熱に触れるというのは、今後に確実に繋がる貴重な経験ですし、地域医療体験と言って然るべきものでしょうね。
加えて先生方のキャラが立ち、感性が面白いというオプションまであればおしゃべり好きな私にとってはこれ以上ない環境です。笑
羊水混濁をだだちゃスープに例えたT先生が、だだちゃスープのレシピを見つけてくれました 笑
白山だだちゃが出始めたら私も作ってみようかと思います。
やはり本格的に行きたいので、とりあえずはミキサーを買ってみましょうかね。
家電芸人のF先生にどれがいいかコンサルトしつつ、近くの洋食屋スカーゼでより美味しいレシピを一緒に考えて貰う、までは行きたいですね。
はたして羊水混濁の色を再現できるのでしょうか...乞うご期待
1年目研修医 佐藤
2018年07月13日