研修医の声

主訴とは?

救急科研修1か月を終え、鶴岡で救急をすることの意味が徐々に分かりかけてきた昨今

頭では分かってきたも、体はなかなか慣れてきません

お昼ごはんを食べて、ゆっくりし始めた15:00から16:00にはどうも患者さんが来ず、16:00を過ぎたあたりから来だし、気付けば「魔の16:00」と呼ぶべきラッシュ&ラッシュ

私なんかは翌日までダメージ残ってますが、先生方も看護師さんも翌日もシャキシャキですごいですよね

そんなラッシュ中に来てしまうのがこんな患者さん

主訴:せくせくする

主訴:こわい

私はこの主訴を言う患者さんに、僭越ながら一つだけ申し上げたい

方言はやめましょうよ、、、、

確かにわかる、言いたいことはわかりますよ

ただあまりに広すぎます

だってそんな訴えをする患者さん達必ず聞かれてますもん

「どごがだ?」って

欲しい情報が何一つとして入っていません

ネイティブ的には「こわい」と言えば胸とかをイメージするかと思います

しかして、この一か月を見ていると「こわい」にも関わらず、足が折れてたり、全くの不定愁訴だったり、胸どころか尿路感染だったりなんてのがザラです

本当に、広いんです

庄内弁に自信があったハズの私も完全に盲点で、卒倒

地元民でこれならば、昨日NHKでやってましたドクターG監修の先生もきっと、

こわいは怖い

とお手上げレベルなのではないでしょうか

こわい、という意味は怖いではありませんし、胸が苦しい時だけに使うと言うわけではありません

余りに雑に乱発されてしまいます

こわいって、ニュアンスそのままに標準語に直すと「苦しい」ですからね

よくSG先生が言う言葉を借りれば

「人は生きてるだけで苦しいですからね」

まさにこれ

いつだって人はこわいんです

少なからず、主訴「こわい」は生命活動を続ける上で誰しもが感じていることですから、主訴足りえません

全くの無意味です

ですから、私も気合いを入れて問診をしようとします

時間経過、発症様式、重要度、増悪寛解因子などなど...

しかしどれを聞いても「こえー」と返ってきてしまいます

それもそのはず、「こえー」の人はこえーわけですから、まともな会話になりません

こえーしか言えない患者さんの多くはバリバリの高齢者。

耳も遠く、多少なりとも認知症が入っており、細かい会話は難しく、ご家族や、デイサービスの職員さんのぱっと見の印象であったりで、「こわそうだから」と搬送されるケースも

こえーのはわかります、確かにこえーですから

どこが?

なんで?

いつから?

どういうとき?

どのへんが?

こう聞きたくなるのは当然ですよね...

こんな便利な方言があるせいで、患者さんも使ってしまいます

同様に「胸がせくせくする」これも全く持って意味をなすようでなさない

意味は?と聞かれればわかる方も地元には多いことでしょう

けれど、その主訴を聞いた時に適切な検査をオーダーできるかどうか、せくせくするから取るべき身体所見は何か、鑑別診断は何か

ここまで適切に考えるまでにせくせくするの意味を場合分けできている人は、片手で数えられる程度なのではないでしょうか

診断に至るまでの過程と、結果が一致する確率が余りにも低いようです

せくせくする人が重症感を訴える時と、訴えない時の差は「こわい」と言うかどうか

さあ、こわいループ突入です

こわいと言われないせくせくするは重症感が無いものの、オーバートリアージになりうる

ただ、こわいと言われれば意味が苦しいと同義なわけですから、こわいと言われた途端に情報が何もなくなる

難しいの一言です

結局バイタルサインをしっかり取って、視診、触診、聴診、打診で鑑別上げて、漏れないように検査していくしかないんですよね

こうすれば患者さんは損は絶対にしませんから

怖い病気を絶対に漏らすことなく診断することは重要です

しかし、理想を言うなればあまり検査をせずに、身体所見や問診からぴったり当てることなんでしょうけどね

こわいが蔓延するここ鶴岡では...難しいのではないでしょうか

だからといってはなんですが、やはり鶴岡市の方で問診がしっかりと機能するような方策を取って欲しいものですよね

「こわい禁止条例」とかどうでしょう

60を超えると同時に、鶴岡市民は「こわい」と言ってはならない

自分の身体症状があった際、受診前に主観的かつ客観的にその症状の特長を3つは挙げること

もし仮に、「こわい」という主訴で来院され、3つの特長を挙げられなかった場合、こわい特定療養費を徴収する

こうすれば鶴岡市民一人一人が自分の体調変化に敏感になることができ、結果的に初期の状態でスクリーニング検査を受けることができるため救急搬送の数が減る

加えて、医師数が少なく多忙な荘内病院の患者数を減らすことが出来る

病気の知識も、病気の初期の状態から知ることが出来る方が増えますから、病識が深い患者さんも増え、これまた病気に強い鶴岡市になりそうですね

これはいいことばかり、こわいを止めればこわいことがなくなります

こわいがあるから、こわいんです

みなさん、お化けなんていないんですよ!!!!

・・・現実逃避なんてしてないで、こわいの鑑別方法を考えるべきでしたね

あー、、、、こわいこわい 冗談が過ぎましたかね?

一年目研修医 佐藤

2018年12月02日

研修医

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