研修医の声

身体所見の話

医局歓送迎会の帰り道、昨年話題にしただだちゃ豆スープの先生とレロレロになって話していた

2週間程度しか回っていない産婦人科ながら、先生方からは多くのことを学んだ

手技をするとか、お薬の使い方だとかそういった研修医が求める一般的な知識だけでは無く、医師としての姿勢そのものを学べたのは今も尚生きている

患者さんへの接し方も産婦人科は独特で、中でも産科に関しては妊婦は自分だけの為に生きてはならない

お腹の中の子供の健康を意識して、時に自分を捨てる必要性がある

その必要性を説く先生方を見て、「すごい言うんですね」と率直に感想を述べた時、返ってきた言葉にただ感動を覚える他無かった

ゆりかごから墓場まで

死生観を常に問われ続ける学問に従事しているからこそ出てくる言葉の重さだろう

産婦人科の先生方誰もが含蓄のある言葉をさらりと言えて、生き方に余裕を感じるのは、それだけの哲学を持っているからに他ならない

診療技術に関しても「腹を触ること」に重きを置くスタイルは何より面白い

今でもよく語り草にするのだが、酔っ払ったノリで先生に再び振ってみたのだ

「いや、あれね。実は理由があるんだよ。」

理由?わかりますよ。お腹の張りを評価する為ですよね、触診は大事ですよね。おおよそ何をいうか検討を付けて聞いていた私は、ただの知ったかぶりだったとその直後、思い知ることになる

「俺大学にいった頃、そうだな6年目ぐらいの時にだな。上の先生と患者のところ行って腹触ったんだよ。そしたらな、少しいつもと肌の感じが違ったんだよ。そんでな、その先生が言うんだよ、採血と画像とれって。」

えっ、肌の感じだけで?湿ってる、湿ってないそれだけで分かったってことです?

「そうだ。そしたらな血栓あったんだよ。腹触るとなそこまでわかる人はわかんだよ。」

「腹さわんないやつはモグリだ、っていうからな。俺は触るようにしてんだ」

でも妊婦さんのは?そこまで触る必要ってあります?

「確かにセクハラだ、なんて言われることもあるけどな。触ることで患者教育になることもあるんだよ。研修医が回ってきた時に腹触って、その所見聞くだろ?」

でしたね。so,soとか

「そうだ。そういうのをな患者さんにするとな、みんな覚えるわけだ。そしたら次に張ったときとか、次の子の時にも生かせるだろう。だからな腹さわんのは大事なんだ」

ここまで考えてるとは...

所見が面白いだけの回診じゃなかった

先生と患者さんに協力してもらって触って所見の程度を上級医と共に理解することって、言うなれば上級医の触覚に伴う臨床的感覚をそのまま移植することにもつながる

他人に何かを教える時難しいのは、その人の五感にまつわる感覚的なところ

それがマンツーマンで教えて貰えるって、実はとっても素敵なことですよね

そこまでの診察哲学が無ければ、ただ患者さんに触って「失礼します」「ありがとうございました」ぐらいで終わっちゃいますから

感覚のフィードバックで以って自分の診療技術の糧になり、患者さんに切迫の感覚を持ってもらうまで繋がるだなんて相当な教育者ですよ

確かに私も産婦人科回ってからお腹痛い人の腹触るようになったし、婦人科系疾患を疑う患者さんの腹痛が来た際も、当時の感覚を思い出しながらとりあえず触ってみるようにもなった

急性腹症で、正中付近に硬結が触れ、卵巣茎捻転を疑って画像を撮った結果、筋腫であったけれども画像を撮る前にお腹を触ったことである程度の鑑別が上がることが増えた

まだまだ年数が浅くて触って一発でわかることは無いまでも、張ってるかとか、危ない腹かどうかは最近は当たる

これもまた触る習慣が当たり前になったからだろう

こうした身体所見を取る重要性は教科書的には明らかでも実際どれほどのものかは、実臨床で使ってみないと分からない

次に回るのは外科、腹を触ることがめちゃくちゃ増える

とりあえず触って、押して、感じて五感で患者さんを感じれるようになりたい

外科版のお腹の所見もまた見つけたいところ

産婦流の「はってはないが、はっているみたい」な微妙な奴を見つけて必ずブログネタに!!!!

2年目研修医 佐藤

2019年05月17日

研修医

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