研修医の声
日常診療ネタ:腹膜炎とイレウス
外科をローテートしているとこれまでの内科系診療とは一風変わった雰囲気に
患者さんの入れ替わりが激しくて、やらなきゃいけないことも「手術」が入るために作業が倍に増える
倍に増えるだけあって、手術パートのお話は全て斬新に聞こえるし、術後管理の仕方なんかも府に落ちるようでそうでもない、所謂トラディショナルな外科的なやり方、あまり経験してこなかった外科的な考え方が要求されることがあるため、教科書的な考え方とは少し違うこともしばしば
でもせっかくやるなら体系化して自分の中に落とし込みたいものだけれど、なかなかそこまで頭が回りませんね
〇腹膜炎の話
さて、外科疾患には切っては切れない関係なのが画像検索
画像の読影能力も高めていかねばなりません
しかしてこれも体系化されて教わるわけでもなく、とりあえずはぶつかり稽古、読みまくって慣れていくようなもの
どこかで教科書をじっくり読めれば全部わかるときが来るんだろうなと信じて読みまくってますが、いくらやったとてその道のプロであっても騙されることがあるというものなのが読影の面白いところ
先日経験した症例では、腹膜炎が波及して発症の麻痺性イレウス
さて腹膜炎の原因は何か、となった時小腸内にきらりと輝く1cm程度の構造物
CTで内側は低吸収、外側は高吸収
ブツはいったいなんだ
原因としてはほぼこれだろう、とはなっていたものの原因がわかりません
そこで三人のドクターが仮説を立てます
①読影家
「患者情報も加味するに義歯だろう」
認知機能が乏しい患者さんであれば、そうした誤飲が起こる可能性はしばしば
最もそれらしい
②歯科医
「歯髄が見えるので歯だろう」
こういわれちゃ信じるしかない
これまた最もそれらしい
③外科医
「右下腹部痛とか、右下腹部の膿瘍であれば虫垂炎穿孔だろう。すなはち糞石だ。」
・・・先生CT見てますか?
そんなよくある話をしたってどうせ違いますって、だって歯が見えますもん
これは素人目に違いそう
おなかを開けた結果は...
ぱんぱんに腫れ上がった小腸、壁が薄くなりniveau像をそのまま直視下でも見せる腸内容物、外科医はつるつると小腸を手繰り寄せて虫垂へと辿りつく
ピッと電気メスを入れ、「あったぞ、大きな歯だ」
そう言って取り出したのが、茶色のころんとした物体、すなはち糞石だったのだ
画像を丁寧に読んだはずの二人のプロより、経験的かつ疫学的によくあるものを予想した外科医が正しかった
「歯がないな~」
煽りあらされる
剣を握るよりペンを握ろ
なんてかっこいいフレーズがあるが、外科においては
ペンを握るよりメスを握ろ
この言葉がぴったり合う
オーベン先生達ただただすごい
いっぱい症例集まるところで研修しないと、やっぱり駄目ですね
2年目研修医 佐藤
2019年06月20日