研修医の声
二日酔いの翌日に
その日は花の金曜日
調子に乗って飲みまくり、床についたのは朝の四時
翌日の朝回診は九時からで、せめて八時半には行かなきゃいけない
最悪行けなくても外科だし「二日酔いで遅れました」「二日酔いでいけませんでした」と言っても、これは「病気の為お休みします」と変換されるから気にしなくてもいいか
かなりどんぶり勘定であるが、自分の中での起きれない言い訳を確定させて安堵した状態だったため、寝坊は免れないだろう
そんな杞憂もむなしく、しっかり八時で起きてしまう
時間通りにいってしまうのが、外科ローテの性ってやつか
回転性めまい、とまではいかなくても頭痛と気持ち悪さでカルテ情報の理解が安定しない
なんなら画面が何度もブラックアウトする・・・瞼が重いらしい
いつも通りの回診がいつも通りに終わったころには、体調がいまいちだったはずの自分の体もエネルギーを欲しがり始める
おなかがぺっこぺこなのだ
研修医陣のボスであらされられる某医師と共に九階レストランへ
このころには足取りはしっかりしている
野菜タンメンバタートッピング×2
チャーハン大盛り
カニクリームコロッケ単品
とんでも量を食べてお昼寝をしたい
せっかくの土曜日なのだから普段ではできないことを、二人の共通認識だった
なんとか二人で食べきった頃には、腹部:膨満軟、圧痛なし、張りありの所見に
嘔気はあるし、膨満感強く、全くおなかが減る感じがしない
そこでふと思ったのだ
イレウスの症状ってこんな感じなのかな
ぱんぱんで嘔気がするけど吐けない、これってとんでも辛いのでは
そんな中で鼻管入れられて空気も内容物も引いてもらえたらそりゃ楽になる気がする
食べすぎの場合は食べなきゃうんこになって出ていく過程で楽になり、おなかが空いてまた食べたくなる
イレウスもざっくりそう
食べなきゃ腸管も徐々に回復してきて、下に内容物が下りていき、ガスが出て便が出れば楽になり、おなかが空いてくる
出なければおなかはすいてこない
「おなかが空いてくればよくなってきた証拠だ」
随分俗な考え方だなぁとは当初思ってはいたが、言われてみれば納得が行く
おなかが空けばご飯が食べれる、これこそ改善の証だろう
当たり前なことだけど、三大欲求の一つが食欲なのだから、それがなくなるっていうのは病的だ
それが戻ってくるってことは治ってきたと見て何の差し支えも無い気がする
しかしておなかが空いて食べたいと思うのに、最初に食べさせられるものが流動食だとか、柔らかい食べ物だけとなると少し寂しい気がする
それでも患者さんたちは「おいしい」と言って喜んで食べている
そんな場面を見ていると愛おしさを感じる一方で、人間の食欲の本質を垣間見えたようなそんな気もする
食って大事なんですな
その食をサポートする職の消化器外科、素敵じゃないですか
2年目研修医 佐藤
2019年06月24日