研修医の声
夏休みの過ごし方、かんちゃん先生ふたたび
ワインまつりと時を同じくして―私佐藤は、翌週に控える夏休みの計画を練っていた
土日含めれば一週間と、十分な連休期間
どこにでも行けるが...国内であれば小笠原だけが行けないところか
どこにでも行けるとなれば大手を振って国内の気になるところを、大きく沖縄にでもと思ったが如何せん私は泳げない
泳げない人間の夏休みの過ごし方となれば、解放感が今一つのなるのか、考え方からしていささか実用的にもなってしまう。
進路も未定なのに頭の中を空っぽにして遊びにいけるかと言えば、そんなはずもない。まずは進路決める為に母校山形大学に。
その後は...八年越しの想いを叶えに金沢に行こう。「聖地」巡礼だ。
であるなら、運転もかったるいから程よく新潟にでも泊まってみて、金沢でも一泊して...巡礼終えたら何をしよう。その時にでも考えればいいか。
せっかくの夏休みなのだから、キツキツに時間に追われるのも、他人に束縛されるのも、全部避けていきあたりばったりにしたい。夏休みは、ただ仕事を休んでリフレッシュするのでは十分に休めない。面倒事全てを避けに避けて一人になる為に使おう。
―かくして私は、綿密に練られた、カスカスの夏休み計画を立てた。
夏休み最終日には宿直も待っている。十分な身体と心の休養期間が無ければ、研修疲れ、夏休み疲れでろくに働けなくもなるだろうことも加味すれば、やはり綿密と言っていいだろう。
後は如何にブログネタになるようなことをするだけの瞬発力があるかにかかってくるが、巡礼中の私は冴えていた。その時の様子は―金沢、富山を跨る、花咲くいろはもといPAWORKS巡礼の旅は―また今度にしよう。
この綿密な計画の最後に企画していたのが、鶴岡でのかんちゃん先生との再会だ。
彼は昨年、山形大学よりたすきがけ研修医として荘内病院に四か月程働いていた。
彼もまた県内で働いており、夏休みでまた鶴岡で飲みたいと前々よりラブコールがあった。
一年振りに、思い出の場所で飲むだなんて、夏の終わりにぴったりじゃないですか。かの地より三時間超かけて、わざわざ来てくれましたよ、お久しぶり!
積もる話はたくさん、お互い一年も会っていないと色んなネタがあるものですね。
臨床的ネタも色々、僻地医療の話で盛り上がれば、あの人はどうなっただの、最近いい飲み屋見つけただの。
それでも一番ネタになるのは荘内病院でのこと。
呼吸器内科K先生との研修は本当に自分を変えてくれた、本当に勉強になったし心がぶれなくなったと、かんちゃん先生感慨深げ。
今年でなくなってはしまったけれども、あれだけ貴重な経験をさせてくださった先生が移られた病院の研修医は羨ましいですよ、ほんと。
三次会へと場所を移し、深夜やってる飲み屋といったらあそこしかない、焼き鳥屋ですが焼き鳥は頼まず、新メニューに入ったちきん南蛮が今日もおいしい。
このタイミングで、くだんのK先生と共に学会に行っていたFも終了と同時に帰鶴し合流。タイムリーな話題が楽しかったですね。
最後は昭和通りをお散歩しながら帰路につく。
一年経っただけなのに、しきりに「懐かしい」と繰り返す彼の足取りは、少しふらついて見えた。
それは単に千鳥足に依るものなのか、懐かしさのあまり心の動揺が足取りに出たものなのか、私の視界がゆがんで見えたのかは定かではない。
ただ一つ言えることは、私が翌朝起きれなかったということだ。
通常なら叩かれるべきではあるが...三連休ど真ん中であったのが救いだろう。前日完徹の宿直に当イベントの予告もしてあったから、とりわけ何の違和感もなく受け入れて頂いた。
だがそれでも言わなければいけない。
先生方、朝回診いけなくて大変申し訳ありませんでした。彼が、鶴岡の秋の味覚がそうさせたのです。私はきっと悪くないと思います。
二年目研修医 佐藤
PS
鈍感力である。
2019年09月23日