院長挨拶

院長挨拶

aisatsu.jpg 2019年12月に発生した新型コロナウイルス感染症は、第8波の流行もようやく落ち着きを見せ始めています。感染予防対策の緩和も少しずつ行われるようになってきて、いよいよwithコロナの時代に入ってきたようです。
 一方、ロシアのウクライナ侵攻からすでに1年を経過しているにもかかわらず、いまだ戦争の収束が見えず、世界情勢は混沌としています。この戦争が1日も早く終わることをお祈りするとともに、このような人道の危機を教訓とし、世界中の人々と手を取り合って、恒久的な平和の世界の実現に力を合わせていきたいものです。
 このような慌ただしい日常のなかで新年度を迎えることになりましたが、令和5年度の初めにあたり、病院長として一言ご挨拶申し上げます。
 かつて鶴岡は、庄内藩14万石の城下町として栄え、昨年、酒井家入部400年の輝かしい年を迎えました。そのような鶴岡の地で、当院は、大正2(1913)年に東・西田川郡の組合立の病院として当地で開院し、令和5年6月で創立110年を迎える歴史と伝統のある病院です。現在、鶴岡市と隣接する三川町、庄内町を主診療圏(人口約15万人)とし、酒田市、遊佐町と新潟県村上市の一部を準診療圏(人口約12万)とする広域医療圏をカバーしています。
 平成15年に現在の病院に新築移転し、26診療科、521床を有する急性期病院であり、地域医療支援病院の指定を受けています。庄内地域で唯一、山形県地域周産期母子医療センターの認定をうけ、NICU、GCUを設置して周産期医療に力を入れています。また、地域がん診療連携指定病院として、がんの治療成績の向上にも努力しています。さらに、臨床研修指定病院として、毎年基幹型と協力型あわせて10名程度の初期研修医を受け入れていますが、救急患者数が多いことや多彩な疾患の患者に遭遇することから、救急診療が強くなり、総合的に判断できるバランスの良い研修医が毎年多く育っています。ちなみに、令和4年の救急患者総数は1万9687人(1日平均54人)で、救急車搬送患者は山形県内で3番目に多い3700人以上にのぼり、1次、2次救急と3次救急の一部を担っています。全国の研修医に研修先として選んでもらえるよう、引き続き魅力ある研修環境の整備を進めていくつもりです。
 一方、免震構造や屋上ヘリポートを備えた災害拠点病院でもあり、DMATの派遣を行うなど災害医療にも力を入れています。また、緩和ケアの取り組みも活発です。平成20年から3年間にわたって行われた厚労省の戦略研究、緩和ケア普及のための地域プロジェクト(OPTIM)に全国4地域の中から選ばれた鶴岡市、三川町では、「庄内プロジェクト」の愛称のもと、鶴岡地区医師会等と連携して緩和ケアの普及に注力しています。庄内プロジェクトは、OPTIM終了後10年以上を経過した現在も、色あせることなく活動を続けています。この取り組みは、がん患者の在宅医療推進の面で極めて大きな成果を上げており、OPTIM開始前の鶴岡市・三川町のがん患者の在宅死亡率5.7%が、令和2年度には20%近くまで上昇しました。希望する場での看取りの実現に向けて、これからも地域医療連携を推進していく覚悟です。
 一方、3年前に医療連携協定を締結した国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)との連携では、セカンドオピニオン外来である「がん相談外来」や、当院で行う腹腔鏡手術を、がんセンターにいる指導医がオンラインで指導する遠隔アシスト手術の実現により、地方にいても先進医療の恩恵を身近に受けることが可能となりました。「がん相談外来」開設前後1年間に当院の地域医療連携室に寄せられた「がん医療にかかわる患者や家族からの相談件数」は、外来開設後の1年間で58%も増加しました。がん研究センター東病院との連携により、地域住民のがんに対する関心度が上昇した結果であると評価しています。
 医療の進歩に伴い病院の果たすべき役割、市民から求められる病院像も年々変化してきています。当院は、地域の中核病院としてそれらのニーズや変化に的確に対応し、地域住民が安心してこの地で生活できるよう、期待に応えていくつもりです。「ひとを大切に、ひとの命、そしてひとの心を大切にする荘内病院」であることをモットーとし、これからも職員一丸となって地域医療に貢献してまいります。そして、当院の全職員が生きがいを持ち、働く幸せが感じられるような職場作りを目指していきます。庄内地域の基幹病院の一つとしてその役割を十分果たせるよう、病院長として責務を全うしていく覚悟です。よろしくお願いします。

 令和5年4月
鶴岡市立荘内病院
院長 鈴木 聡

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